温故知新を意識したわけではないけれど、突然読み返したくなって書架を漁って引っ張り出してきた。
泉鏡花は結構好きで、あの独特の文体を舐めるように読んでいるだけでもう脳みそが溶けてしまうくらい好きなんである。話の筋なんか、もうどうでもよろしい。あの文語とも現代語とも標準語とも方言ともつかぬ、独特の言い回し。音読したときの響き、含めて凄く良い。
読み始めて、この感覚何かに近いなあと思っていたら、それはそれ、能の謡本を読んでいる感覚に近い。直接話法と間接話法がぐだぐだに入り交じる感じ、あれ、今の語り手は誰だっけ?という目まぐるしく変化すると主体と言えばいいのか、それそも「主体」という感覚が違うと解釈すれば良いのか、それはともかく。
泉鏡花は謡本なのだ、と思って読むと面白かった。
ということで、この話にこれ以上のオチはないのだ。誠に失礼いたしました。