BearLog PART2

暇な中年の独り言です

新OSのインストール中につき……

 1月19日にはまた能楽の発表会がある。

 今度は「経政」という曲のキリを勤めさせて頂くことになっている。この「経政」は平家の貴公子、特に琵琶の腕が優れていた人で、一の谷の合戦で討ち死にしたけど、自らのお弔いの有り難さに幽霊となって現れる、というもの。貴公子だとはいえ、そこはお武家様なので、刀を持っているし、型じたいはそれなりに凛々しく力強いものが多い。ということで、発表会に向けて難儀しているのである笑。

 難儀しているのはいつものことなのだが、今回の難儀の仕方は面倒なのである。というのも、体の動かし方についての新しいOSをインストールしなければならないからである。

 能楽を学んで、体の動かし方についてはいくつかのOSがあることに気が付いた。まずはきれいな女性のOS(「紅葉狩」「船弁慶(クセ)」「草紙洗小町」等々)。そして神様系のOS(「養老」「国栖」「嵐山」)、まあこの2パターンについては何曲かやってきているのだが、新しい身体OSをインストールするのにはそれなりに苦労してやってきたということだ。

 特に神様系(「養老」「国栖」「嵐山」)のときは、非常に苦労した。

 力強い姿を表現するために、足を大きく斜めに引くところ、半身を前にぐいと出すところ、常に両足を広げて立つところや足の歩幅等々。きれいな女性OSとは違った表現型が随所にあって、この表現型に慣れるのに不器用な自分は随分と時間を費やしてしまった。

 体の向きを大きく変えるときに軸足を大きくひねるというところ、ここには本当に苦労した、いやいや今でも苦労しているかもしれない。本当にほんと、本当に苦労した。上半身をダイナミックに見せるにはまずは下半身のところをきっちりと動かさなければならないというところは本当に苦労した。とはいえ、一度インストールしてしまえば、それは確実に自分のものになるので、同じOSを使ったものであれば、二曲目、三曲目になるとOSはインストールされているから、型(アプリ)をインストールしていけばいいわけで、それはOSの新規インストールに比較して言えば多少は楽になってくる。

 とはいえ、能楽の場合、演じる人間のパターンによって身体を動かすOSが大きく変わるというところは醍醐味でもあるし、演じるだけではなく、見ていて面白いところなんだと思う。

 で。今回の「経政」は、貴公子とは言え、前にも述べたようにお武家様なので今までにはないお武家様OSをインストールしなければならないわけだ。OSのインストールはアプリのインストールと比較した場合、工数が圧倒的にかかる。もっとも自分の場合は、という限定がつくのだが……。

 で。苦労しているというわけである。

 お武家様OSで苦労しているところ、まず刀の持ち方である。

 仕舞なので、勿論模造刀を持つわけではない。扇で代用するわけだが、どちらが刃なのか峰なのかを手の形で表現していくわけなのだが、これが自分にとっては意外と難しい。やっているうちにごちゃごちゃになってしまう。

 次に目付柱に出ていく時に骨盤を正面に向けずに斜めに構えて、出ていきながら骨盤を正面に戻していくような動き、これは今まで全く出てきたことのない体の使い方だ。一度「嵐山」で骨盤の向きと上半身の向きをずらしてから(上半身を捻ってから)拍子を踏んで、拍子を踏みながら上半身と骨盤を同じ向きに合わせる、というのが出てきたが、ここも苦労した。

 基本的には、上半身と骨盤はひとつのブロックのようになっているし、そのOSがやっと体に入ったところで新しいOSをインストールするとなると、それは大変なのだ。上半身と下半身をワンブロックとして動いてきたOSを入れ替えて、上半身を捻るという型が入ってくるというのは、まさに新しいOSのルーチンだということになるわけで、習得に時間がかかるのは自明の理であろう。

 と、例を上げていけば本当はキリがないのだが、とにかく新しいOSのインストールということで本当に苦労している。

 で、何とか1月19日には間に合わせないといけないわけで、精進しなければいけないのだ。

 という途中経過の報告でありました笑

 

 しかし。登場人物のプロファイルによって体の動かし方のOSが根本から変更になるというのは、極端な抽象化であって、ある意味すごいモダンな感じだなあとちょっと感じ入っている次第である。

 面白い、興味深いとはいえ、学習者にとってはいたずらに難しいので困る笑。