そもそもだいぶ昔に読んだ小説である。とはいえ、あまりに印象深かったので、こちらで記録。
本書だが。ネットだったか新聞評だったかでちょっと気になっていたので、Amazon様で購入。小説を読むのは随分久しぶりなような気がしていた。
とはいえ、この本、自分にとっては本当に久しぶりの大当たりだった。いやはや、本当に素晴らしい。
細かいことはネット上のあちこちで読めるから割愛するとして、自分としてとにかくハマったのは天才的に鋭い比喩、なのだ。自分の中では、倉橋由美子や矢作俊彦的な、自分の感覚がそのまま筆にのって原稿用紙の上を走っていくような、イメージを喚起するに最もふさわしい言葉を的確に掴みだすところ、というか、その描写力に心底イカされてしまったのだった。
そもそも比喩ってなんだろう? 比喩を使うことで何かが伝わる。しかし比喩は比喩であって、そのものズバリの表現ではないわけで。ただ自分のある種の感覚に刺さるから、そこで表現されていることが自分の中に入ってくるというか、そのおかげで理解できるというか、共感できるというか。比喩は道具なんだろうけど、その比喩による理解の快感というものも確実に存在するわけで、その情報量の多さは特筆に値するのだが、そもそもこうしてクドクド言っているということはすなわち、比喩の何たるかを自分が理解していないということだ。
その概要が理解できないにも関わらず、道具として比喩を利用する。
なんてことを考えながら、あまりの比喩の鋭さを感服しながら、本書を読んだわけである、
細かい話はまあいいとして、一読に値する小説であった。