BearLog PART2

暇な中年の独り言です

舞囃子「経政」

 去る9月22日、喜多能楽堂において明生会の発表会があった。

 来年4月の厳島神社での奉納能をターゲットに「経政」の舞囃子を勤めさせて頂いた。

 本来であれば、素謡と連調もあったのだが、新型コロナのせいで娘のバレエの発表会と重なってしまい、午前中の舞囃子だけ勤めさせて頂き、午後の素謡と連調は泣く泣く断念することにした。

 皆様、ご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした。この場を借りて改めてお詫び申し上げます。

 今回の発表会は本来であれば4月に行われるものであったのだが、例の緊急事態宣言のせいで、4月の発表会が中止になり、スライドで9月になったものである。その間7月の浴衣会で経政(キリ)のお仕舞をやったので、当初予定通り4月にやっていたときよりは仕上がっていて当たり前……という話なのだが、なかなかそうもいかない。

 新型コロナでお稽古のスケジュールがずれてしまったりする中、モチベーションの維持も大変で(と、それを言い訳にしてはいけないのだろうけれども)、お尻に火がついたのは8月になってから、という感じだった。お恥ずかしい限り。

 そのせいもあって、はっきり言ってどうなることやら、という感じではあったのだが、8月くらいから家でも不安が残るところをコマメに練習し、自分としてはそれなりに準備してきた気はする。

 とはいえ、以前もここで書いたような気がするのだが、修羅物のOS(体の動き方の原理原則)をインストールするのにすごく時間がかかったのは事実。基本形である「修羅の構え」を筆頭に、両足の間を必ず開けること、型を決めるときに腰を入れて踏ん張らなければならないところ、半身のまま前に出るところ、刀に見立てた扇の扱い方等々、慣れない体の使い方に慣れるのに、不器用な自分は随分と時間を費やしてしまったから、新型コロナのせいでスライドしたのが案外良かったのかもしれないという気もした。いやあ、怪我の功名である笑

 発表会直前のお稽古で、「これで申し合わせで少し間違えれば大丈夫。少し間違えれば緊張感も高まるし、その方がいい」と先生がおっしゃったのだが、申し合わせではいくつか間違えて、図らずともその通りとなった笑 それが良かったのかどうかは分からないが、本番にはいい形で入っていけたのではないかと思っている。とはいえ、自分としてはまだまだ満足の域には達しないのも事実。

 さて、毎回毎回発表会のときにはテーマを決めているのだが、今回は「サクサク舞う」ということを最後の最後に意識してみた。自分は、何となく惰性というか、型を決めた後の余韻に浸ってしまう口で、しかも今回は修羅物OSが怪しかったから、尚の事次の型に移行するまでまったりとしてしまっており、「早く次」と先生に急かされることが多かった。そのため、修羅物OSのインストールが何とか終わった後は型から型への移行を迅速に行い、「サクサク舞う」ことを強く意識した。

 その「サクサク」というところについては、何とかイケたのではないかと思う一方で、後で知人から頂いた動画をチェックしてみたところ、詞章の進み方よりも速く進めてしまい時間が余っているところもいくつか散見されたから、たっぷりいくところとサクサクいくところ、もしくはもっと詞章の乗せて動きの間をしっかりとっていく等々、考えなければならないところが多いなあと思ったりした。

 あと二箇所ほど微妙にバランスを崩したので、そこはお恥ずかしい限り。

 特にキリの「身にかかれば はろう剣は 我と身を切る」、すなわち回って飛ぶところ。ここで微妙にバランスを崩したのは本当にお恥ずかしい限り。

 そのときの心持ちを思い返してみると、そこまでさしたるミスなく(何でもない前へ出る運びでちょっとバランスを崩したのを除けば)きて、ちょっと安心してしまったのだな(泣) 多分その心持ちが型に出たのではないかと思う。集中力を一瞬たりとも切らしてはいけないというよい教訓になった。

 先生からは終わった直後に「『飛び入りて』のところ、迫力あった」というお言葉とその後翌日メッセージで「腰が安定してきた」というお褒めのお言葉を頂戴したのだが、「腰」の問題については、修羅物OSのインストールが一応は成功しているのだという理解をした。あと、自分としては普通に運んでいるときに、頭がひょこひょこするような感じになるのが前から気になっていたのだが、これについては「腰」の安定をきちんと意識して、後ろに残る足できちんと蹴って進んでいけば改善されるのではなかろうかという手応えを掴みつつある。

 とはいえ、それ以外にもまだまだ改善すべきところは多々あるし、特にシテ謡については本当にまだダメダメである。

 能に果てあるべからず、初心忘るるべからず、である。

 先生、ありがとうございました。引き続きご指導方よろしくお願い致します。

 引き続き精進、精進である。