BearLog PART2

暇な中年の独り言です

9月12日 「春の祭典」に涙する珍獣の化石笑

 朝一番、一橋スタートアップの会(っていう正式名称でよいのかどうかはわからないけど)で出会った弊社投資領域ではないが、面白いことをやられている社長さんに古くからの知人というか友人でエンジェルのY氏をご紹介するというところから一日が始まった。場所は代官山。代官山といえば、昔新卒で入社(本当は入行というのだが)した銀行の研修センターがあったところ。新卒で泊まり込みの座学の研修を受けたのはもう何年前のことだろう。今や同期の一人がFGの社長なんだから、月日が経つのは速いものだ。

 お引き合わせはうまくいったといえばいったし、これから何が起こるのかはよくわからないが、領域が自分の好きな(とはいえライフワークとするにはシンドい)エンタメ系の話であるためY氏をご紹介したのだが、Y氏はNYのメトロポリタンやボストン美術家などで能楽の展示をご覧になられたらしく、まずは見るところからはじめたいという要望をお持ちなので、吉祥寺の月窓寺薪能をご紹介する。チケットが取れたらご一緒することをお約束。毎年やっているのだが、実際に行くのは初めて。今回は観世のご宗家もいらっしゃるし狂言野村万作先生、萬斎先生だし、大鼓は亀井広忠先生だし、笛は杉信太朗先生、地頭は観世ご宗家。月窓寺って何か観世家とつながりがあるのかなあ。知らんけど。

musashino-kanko.com

 私はランチオンミーティングがある白金の八芳園へ。もう面倒臭いのでタクシーの乗ったら思いの外早く着いてしまった。

 八芳園って以前投資先のナンバー2の結婚式にお呼ばれしたときに来て以来だから、もう何年ぶりだろうってかんじ。八芳園ENJUというレストラン。社長、担当、そしてできの悪い中間管理職としての私の3名。

happo-en.com

 何か八芳園じたいが大規模改装をするらしいということが分かった。ランチオンミーティングだったこともあり、料理の画像はなし。冷や汁おいしかった。

 会社に行くところが、今度新しく取締役に就任する投資先に免許証のコピーを送るために一旦帰宅。なぜって免許のコピーを昨日取ろうと思って家のプリンタ兼スキャナにセットしたのだが、スキャナがWiFiにつながらず、諦めたところ、そのまま免許証をスキャナに入れ忘れてしまったから、一回家に戻らざるを得なかったのだ。バカだなあ。

 ということで、家に帰り免許証のPDFを投資先に送り、わちゃわちゃやっているうちに、ここ最近では最大のイベントであるピナ・バウシュ作の「春の祭典」を東京国際フォーラムまで見に行くということがあったのだ。

 実は自分は文弱の徒なので、ピナ・バウシュのことを知ったのはだいぶ遅い。ヴェンダースピナ・バウシュのドキュメンタリーを撮ったときに同僚から「こういう3Dもありかなあと思いました。面白いですよ」と言われて、映画館で見れなかったので、DVDを買ったという経緯があり、ピナ自身はなくなっているもののずっと関心を抱き続けていたこともこれあり、ちょうど良い機会で滑り込みセーフというかんじで席がとれたのだった。

 って、中央線で東京に向かっている最中に、昨日出会った社長のお一人からFacebookのお友達申請がきて、メッセージもきた。「レジェンドとお会いできてよかった」的なことが書いてあったから、自分はレジェンドでもなんでもなく何の実績もないまま業界にダラダラ居続けているだけの老人なので「レジェンドではなく、珍獣の化石くらいです」と返したところ、また返事が来て「インテリな珍獣は素敵です」的なことが書いてあったので笑ってしまった。

 自分はインテリなのか? これは大いに疑問だ。少なくともマッチョな肉体派でないことだけは確かだが、でもだからと言ってインテリという風に二分法的に結論できるものでもないだろう。でもいいや、そう思う人もいるってことで笑

 で肝心の「春の祭典」なのだが、トリプルビルである。

stage.parco.jp

 二番目の「オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ」は印象に残った。舞台に塩らしきものを撒いたり、ポエトリーリーディングが入ったりピナ独特の腕や足を自分の胴体の方に強く引き付けるような動き等々、そういったものが明らかにピナの後継者によって継承されていく様相を感じることが出来て、なんかちょっとうれしくなった。

 そして休憩をはさみ、「春の祭典」である。ちなみに下の画像は舞台を作っている光景。これは撮影自由だったのでgp多分に漏れずパチリとしたのだった。

 ピナを教えてくれた同僚や何人かに思わず送信。

 白い布をまとった女性ダンサーの一群が舞台に出てきた瞬間に何でか分からないけど泣きそうになった、というか多分泣いたんだと思う。土をしっかり盛った舞台をあれだけのスピードで走る回る、ジャンプする、回転する、のは本当に大変だろうし、あんな不安定な舞台の上で踊るなんて、すごいなあと思いつつ、アフリカ系の方々の身体能力とリズム感にひたすら酔いしれる。何か気の利いた言葉をここに書こうと思ってPCをっち上げたのだが、適当な言葉は出てこない。ダンサーの荒い息遣いがしんと静まり返った空間に微かに響く。ストラヴィンスキーが作ったこのリズムを踊るのには、確かにアフリカ系のダンサーが向いているような気がする。ある種のポリリズムというか変拍子というか、そのリズム感はなかなか我々には出すのが難しいような気もする。

 言語による認識を拒絶するような進退言語というか身体感覚というか、ひとつひとつのムーヴには象徴的な意味があるようにも見えるし、逆に人間の根源的な本能のようなものから出てくるもののような気もするし、単に「feel」すればよいような気もするのだが、生粋の左脳的な自分としてはそれらを言語化できない自分に少し痛立つが、それはそれで良いのかも知れない。

 という感じでもう感動に浸りつつ、中央線で帰宅する。

 何か感想文垂れ流しで何の付加価値もないが、許してください。

 それだけ素晴らしかったのです。