一言で言うと、「web2.0」なる巷で喧伝されているバズワードを、スーツ着ているおぢさん連中にもわかりやすく説いたものが、本書である。よくまとまっているし、最近ネットの世界で起こっていることに対して、ある種の鳥瞰図的な分析を与えている。
とはいえ、業界に属している私などから見ると、色々なところでツッコミを入れてしまいたくなる部分はあるのだが、そこは敢えてここでは言わずにおこう。
うまいなあと思ったのはターミノロジー。ネットの「こちら側」と「あちら側」という言い方は、何も知らない人に、ネットが陥っている状況をメタフォリカルに認識させる力を持つだろう。
また、私自身が生きていく上で、かなりの部分影響を受けてしまった80年代的なポストモダニズムにも通じる「オプティミズム」も、暗く長かった不況から立ち直りつつある日本の状況と軌を一にするようで面白い。
考えてみれば、現在のネットを巡る言説の多くは、80年代的な知的遊戯「ネットワーキング」(金子郁容等々が言っていた)とか「リゾーム」(今やドゥルーズもガタリもこの世にいない)といったバブル的な用語が幽霊のように復活してきたものなのだと言ってしまっても過言ではないだろう。
世界はよくなっている、というよりも、シクリカルな景気変動を繰り返しているだけなのだ、またまた明るい時代に突入だぜベイベ。なんてことをつらつらと思いながら読んだ。
近年の状況を鳥瞰図的に知りたければお奨めします。