11月23日にヴァイオリンの発表会が終わった。能楽の発表会を重ねていたから舞台度胸は以前よりもついた筈だと根拠のない自信を持っていたのだが、これまたコケにコケて最後の方はほとんど指が動かずに終わった。後悔しきり、である。
とはいえ、過ぎてしまったものは仕方がないので嫌な思い出は忘れるとして、次に何を弾くかである。
先生からのメッセージにもある通り、次に何を弾くのかは重要な気がする。もう5年くらいやっていて、ほとんど進歩なく続いているから、そろそろ人生の残り時間をあわせて考えて、もっと目標を明確にしたいなあと思っているのだが、まあ趣味で弾いているわけわけで、本気にやるといっても、生来のイイカゲンな性格もあり、どうするか。とはいえ人前できちんと練習した成果を聴かせられるようになるのはいつの日のことか。
さて今日は発表会明けの最初のレッスンがあった。
私の前のスロットは小学校5年の可愛い女の子なんである。うちの教室ではレッスン終了5分前からレッスン室に入っていいいことになっているので、恒例にのっとって5分前にレッスン室に入ったのだ。
人のレッスンを見ていると非常に勉強になる。とはいえ発表会も終わったばかりで、今日は何を弾いているんだろうなあと思って行ってみると、メンデルスゾーンの「歌の翼に」を先生とデュエットで弾いていた。多分女の子は初見なんだろうなあ、初見でここまで弾けたらいいなあと思いながら、聴いているうちにレッスンが終わる。
レッスンが終わると、女の子も付き添いのお母さんも目に涙をためている。先生との話を聴いていると、今日で教室を一旦おやすみするのだそうだ。そもそも彼女はバレエをやっていて、そっちもコンクール等々でお忙しいらしく、かつ5年生ということで中学受験もあるらしく、一旦ヴァイオリンは打ち切りにする、とのこと。
ここ最近、毎週顔を合わせていたから、私の方も何となく寂しくなってしまった。小学校5年生となるとうちもそろそろ他人事ではないが、中学受験の準備で大忙しになる頃で習い事を整理していかなければならない時期なんだろう。
私のレッスンも課題曲がないことから、私も初見で「歌の翼に」を習うことになったが、途中つっかえつっかえで、先生とのデュエットに進むことはできずにデュエットは来週に持ち越しになった。でも「歌の翼に」はいい曲だなあとしみじみ思った。
自分が奏でる音楽も「歌の翼に」のせてみたいけど、それはいつの日になることやら。人生は短いから叶わぬ夢になるのかもしれない。
帰り道。駅までの小道を一人歩きながら、小5の女の子の前途が幸多いものであることを祈りつつ、爽やかないい卒業だなあと他人事ながら感慨深かった。
秋の澄み切った空に「歌の翼に」のれずにいる、歌心とテクニックなきヴァイオリン学習者として、下手でも続けていけばいいことがあるかもなあと無意味に楽天的になった、気持ちの良い日曜日であった。
そして人生は続くわけだ。