BearLog PART2

暇な中年の独り言です

春季大会が終わり……

 4月14日に明生会春季大会が終わった。

 以前にも書いたことだが、ここ数ヶ月は春季大会で勤める「草紙洗小町」の舞囃子を集中的に稽古していたわけで、その投下した努力に対して果たして結果はどうだったか?ということなのだが、最初に結論を述べておくのはやめよう。

 現役で大学に潜り込むことに失敗して駿台予備学校にお世話になった一年間、我ながら要領よく集中して勉強したと思い返すんだが、今回の舞囃子についてはそのとき以上に集中して稽古をしてきたと言えるような気がする。

 通勤、帰宅の際には必ず稽古のとき録音した笛の音源を型付を見ながら聞き込み、やっとのことで唱歌が頭に入ると、音源に合わせてひたすらにイメージトレーニング。火曜日いつもの入門教室前に一番稽古をつけて頂き、水曜日は自主練(場合によっては先生から稽古をつけて頂いたり)、金曜日も稽古。暇があれば家でも鏡の前で型の見栄えと道筋を確認。そして一泊二日の合宿も参加。

 その間仕事はどうなのかと言えば、別に手を抜いていたという感じでもなく巡航でこなしてきた。ヴァイオリンも普通に仕事やちょっとした合間に譜読と練習(とはいえ、ヴァイオリンはなかなか上手くならないんだけど)・・・。

 我ながらずいぶんと頑張ったものだと思うのだ。

 なにか明確な目標があるとそれなりに頑張れるもんなんだなあと。げに人間とは不思議なもので、五十云歳というのを言い訳にしてはいけないなあとちょっと思ったりもする。

 

 舞台の上で何が起こったかということなんであるが、ものの見事に初段おろしのところで二つ目(右足で踏む)の足拍子のタイミングを間違え、その後三足出るところを忘れ、そのまま左右して足かけて地頭座の方へ出ていってしまったのだ。ここさえもうちょっときちんとできていれば、と悔やまれるところなのだが、これが今の実力なんだろうなあと思う。課題があるところに進歩があるわけで笑

 なんで初段おろしがコケたか、打ち上げ終わって帰宅してベッドに入ってから、じっくりと考えてみた。

 色々なことを考えたが、あれ?と思い当たるところが……。

 実はちょっとしたアクシデントがあったんだが、そのアクシデントに対応するために意図的に(と言いつつも舞台の上では無意識のうちに)外から入ってくる音のインプットレベルを下げていたということに気がついた。。外から入ってくる音のインプットレベルを下げることにより、自分の拍子感覚で舞っていたのだが、初段おろしのところで致命的にずれてしまったわけだ。

 ここ重要。

 で、初段おろしの足拍子のタイミングを間違えたことで、「あ、まずい」と思い、急いで外の音のインプットレベルをあげてみたら、明らかに三足でるタイミングがないように思え、そこで急いで左右、それと同時にインプットレベルを上げて聴き直してそれに合わせて型を入れていった……というようなことが数秒の間に起こったようだった。

 多分、このタイミングで足拍子を間違えて「インプットレベルを再び上げた」のがきっと大正解で、このタイミングで「インプットレベル」上げられなかったら、多分後の方になって致命的なズレとかミスが出たのではないかと思う(と、まあ自己正当化かな。とはいえ、結構自分としては納得のいくミスではある、うんうん笑)。

 掛りから初段おろしまでの間はインプットレベルを下げなければ、どっかで止まったりしていただろうし、初段おろしをうまくこなしていても、そのままインプットレベルを下げたままだったとしたら、どこかで舞が止まったり、致命的なズレに発展していっただろうと思うから、自分としては危機管理的には被害は最小限に食い止めた感じがしており、それはそれで今の自分の実力ではどうしようもなかったのではないか、と。

 不思議なことに、間違えたことを地頭座に出るまでの間に都合よくスカっとすっかり忘れ、稽古や申合せのときのように耳から来る情報のインプットレベルを上げたところ、なんとか立ち直ったんだと思う。

 二段に入ってから仕舞ドコロまでは比較的うまく舞い切れたような気がしており、自分としても納得感のある感じ、それに加えて二段おろしの後くらいから舞台の上にいるのが楽しくて仕方なくなってしまい、目付柱で扇かざしたタイミングで、「なんだ、もう終わりか〜」という、自分の出番が終わってしまうことに対する残念な気持ちが強くなってしまった。

 これは自分でも不思議だった。緊張感というのとは百八十度異なっていて、能舞台にいることが楽しくて仕方ないような、ある意味「ハイ」な気分って言うんだろうか。

 自分の乏しい経験の中では、自転車の「ヒルクライムハイ」みたいな気分。あ〜、「ヒルクライムハイ」があったから、ヒルクライムレースに一生懸命出ていたんだなあとあの頃の記憶がまざまざと甦った次第、なんである。

 

 終わって友人知人と話してみると、お世辞も含めてだと思うけれども、皆さんすっごく褒めてくださるので、自分が初段おろしでコケたということを、打ち上げの三次会で先生に指摘されるまですっかり忘れていたのはご愛嬌ということにして頂きたい苦笑。

 何はともあれ、一生懸命に精進することが必要条件だとはいえ、結論としては、舞台の上で舞わせて頂くことが本当に楽しいと思えた舞囃子初体験、なのであった。