ジムへ行こうかと思ったけど、今日が長丁場のフェスなので体力温存ということでやめておく。ゴミ出しをして植木に水をかけたり庭掃除をしたりして、朝風呂に入って、さあいよいよ出陣ということで、満を持して有明アリーナへ。
そう。
今日はBlue Note Jazz Festival(1日目)があるのだ。しかも私が神として崇拝しているジョージ・クリントン様が降臨されるということで、寝耳に水の話はともかく、昨日の稽古もこれあり、すこぶる上機嫌で有明へ向かったわけである。そう、足取りも軽く。
しかし有明アリーナって遠い。どう行こうか色々と迷った結果、結局新橋からタクシーに乗ることにした。りんかい線の駅からはかなり歩かされるはずだし、ゆりかもめのテニスの森にしても同じことだ。ということで、どうせ帰りはぐちゃぐちゃになるだろうから、行き位は豪勢に?行くかということでタクシーにしてしまった。
ということで何の苦労もなく有明アリーナに着いたのはいいが、タクシーから降りようとしたら何か警備員の人が寄ってきた。「ここで降りないでください」って言われたけど、支払いはS-Ride Walletですんじゃったし、ドアは開いているからすっと降りたら、「ここでクルマの乗降をすると近隣の方からクレームが出るんでタクシー拾うときは大通りでお願いします」と言われた。そうなんだ。知らなかったよ、申し訳ありません、というかんじである。
時間的にはまだちょっと早かったのだが、ツレがいるわけでもないので、まあ入ってしまおうということで入る。席は4階S席。まあ仕方ない。昼食をとっていなかったので、ペプシとまい泉カツサンドを売店で頼む。そう言えばこの手のフェスって売店が混むから多めに買っておこうかなーと思いつつも、休憩時間もそこそこあるから、何とかなるかなあと思ってコーラとカツサンドだけにとどめたが、案の定、これ以降売店には長蛇の列ができてしまい、なにひとつ買うこともできなかった。自動販売機で水を買おうとしたら、何かキャッシュレスの支払がうまくできない。後ろの人が並んでいるから、いいやと諦める。なんか情弱の高齢者の気分。
さて出演アーティストは、一番「.ENDRECHERI.」。実は全然事前にチェックしてなかったのだが、KINKI KIDSの堂本剛氏のプロジェクトなのだそうだ。最初にバラードを熱唱。観客席のファンはサイリウムライトを振っている。そのときは自分は.ENDRECHERI.がファンクバンドだとは知らなかったのだが、次の曲がファンクになったので、へーっと思ったのだが、正直言うと自分の体質には合っていないようだった。スライやプリンス、JB、それこそジョージ・クリントンといった自分が敬愛するアーティストのモチーフがたくさん詰め込まれていて楽しいのは楽しいのだが、ちょっと肝心のグルーヴがなんというのかな、なんか滑舌が悪いかんじがして、ちょっと乗り切れなかったのだ。いい線いっているのになあ、これもきっと自分がおじさんになってしまったからなのではないかと思ったり。
二番手「TANK AND THE BANGAS」。このバンドのことも全然知らなかったのだが、ライブ最高。ほんといいバンド。ヴォーカルのパフォーマンスもすごい。音域広いしステージ狭しと動き回る。バンドもいいグルーヴで、本当に最高。自分は還暦直前のおじさん(おじいさん)でなければ、フロアで踊りまくっていたところだ。すげえこんなバンドいるんだぁとかなり感動。
三番手。「MISIA & 黒田卓也BAND」。じつは生のMISIAを聴くのは生まれて初めて。妻から「ライブはすごかった」と聴いていたのだが、いやはや本当にすごかった。TANKもすごかったけど、いやはやMISIAも本当に本当にすごい。
彼女の歌に涙が出そうになった、というか泣いていたかもしれない。いやーすごいとしか言えない。
実はMISIAについてはCDで出ているものをちょこちょこ聴いてみるのだが、歌がうまいのは分かるのだが、彼女の歌う楽曲がいまいち馴染めないのだ。なんていうんだろう、歌謡曲でもないしR&Bでもないし、なんだろう、中途半端なかんじがして。
しかしどうだろう、彼女の身体からまさに溢れんばかりのエネルギーで放射される芳醇で美しい歌声は楽曲がどうだろうと聴く価値がある。自分はオペラ含めて多少は色々な女性歌手の歌を聴いてきたつもりだが、彼女の歌はもうベストスリーには確実入る。ってか、自分が今まで生で聴いた中ではベストワンかもしれない。
そしてバックバンドも素晴らしい。安定のグルーブ(そうそう前述の滑舌もよく)に、複雑なリズムをいとも簡単に吹いてしまいMISIAの歌声と互角に渡り合い、支え、そして掛け合い、うーんこのカップリング、素晴らしい。これにもまた涙。
至福。眼福ならぬ耳福。
そう言えば彼女がMCで「次の音楽は……」って言っていたのが、自分としてはちょっとぐっときて(これは好きな表現ではないのだが、これしか言いようがない)しまった。歌や曲ではなく、「音楽」なのだ。この感覚が彼女の歌声を天性の資質だけではなくさらに光り輝かせる最大の要因なのではなかろうか、と思ってしまった。これだけでも今日来た甲斐があったというもの。
そしてそして。四番手。「GEORGE CLINTON」である。言うまでもないファンクマスターというか、P-Funk軍団の総帥。自分にとっては、彼が作った音楽はもう自分の血肉になっており、彼の音楽がなければ多分自分は違う人間になっていただろうという気がする。確か89年の今はないMZA有明のライブには当時お付き合いしていた某音大ピアノ科に通う彼女を連れて行ったのだが、分野は違えど彼女もそれなりに楽しんでくれたようだった。思い起こせば「Flashlight」を延々演ってくれた。あれは最高に楽しかった。自分の感覚では15分くらいはやっていたのではないだろうか。しかも例のリフだけを延々と繰り返すのだ。その無尽蔵の体力とグルーヴには本当にイカされてしまった。
その後駆け出しの銀行員の頃、大阪でも見た気がする。MZAほどではないが、そのパワーは健在でイントロからFuncadelicの「Maggot Brain」の例のギターソロから始まってどうなるのか?!と思っていたけど、最高のファンクパーティーになったのをよく覚えている。
ということで、ジョージ自体はお年ではあるものの、回りの力量とジョージ自身の耳の良さで音楽自体のクオリティは昔と寸分違わずあるはずだ、と思い、気合充分で望んだわけであるが、
残念、
な感じであった。本当に残念であった。
グルーヴはあるにはあるが、締まりの無い弛緩した音が拡散され、かつ有明アリーナの音響が悪いせいか、音がぐちゃぐちゃになってホーンやキーボードの音がもさもさしてしまい、クリアに聴きたいところ全体的にわーんとなってしまい、きれいな音が聴こえなかった(これはジョージだけでなく、全体的に言えることだ。少なくとも自分の耳にはそうだった)。ジョージはほぼ終始座っているし、座っているのはいいのだが、やはりお年のせいかバンドの音のクオリティコントロールがなっていなかったというべきか。多分立つだろう絶対立つだろうと思っていたのだが、ずっと座ったままになってしまった。そりゃ思い出の曲のリフを聴けば胸踊らないことはないのだが、身体全体にそれが波及することもなく、なんだかなあと思ってしまった。そう言えばスライをはじめてみたときの感じと似ている。同窓会というか、お達者倶楽部というか、ジョージのバンドのメンバーにはそれなりに若者もいたような気もするのだが、ちょっとどうかなあ。
大好きだっただけに辛い。辛い。
そう言えばスライのことはこっちに書いてある。
四番手「NAS」。本当は最後まで聴こうと思っていたのだが、何か途中でつまんなくなっちゃって「Hate me now」聞き終わってから出ちゃった。
昔はラップ、結構好きだったのになあ。
古くはGrandmaster Flashやrun DMCもIce CubeもPublic EnemyもUS3も好んで聴いていたのに、これが加齢がということなんだろうか、もうラップに乗れなくなっちゃった。
ということで帰宅。ぐちゃぐちゃにもならず有明テニスの森公園の駅まで歩く。
微妙な満足感と高揚感。とはいうものの、TANKとMISIAは一聴の価値があったので、よしとしよう。
自分も年を取るのだから、肝に銘じよう。
加齢はものごとを必ず劣化させるのだ、と。
それと、、、二日目にしておけばよかった、なんて思わないようにしよう笑