BearLog PART2

暇な中年の独り言です

 「青葉台駅チャリンコ2分 (BE‐PAL BOOKS)」

 会社の人の薦めもあってさっそく買って読んでみた。あっという間に読める。内容的にはある種の青春記であり、しかもかなり破天荒な青春記というかんじである。
 早稲田大学自転車部の初女性部員となり、その後サイスポ編集者を経て、結婚し、青葉台駅間に自転車ショップを持つまでのことが描かれているわけなんだが……。
 よく言えば。
 今時分、こういう風に熱く滾る血を持っている人はそう多くない。
 悪く言えば。
 こんな女性がそばにいたら、ウザい。

 こういう突貫系の女性、私の記憶の片隅にあるのだが(苦笑)、その人と間近にいたときに思ったことなんだが、自分自身が思い通りに生きていこうとすると、誰かに必ず迷惑をかける。その迷惑をかえりみず、「自分は……だから」という言葉を免罪符にして突っ走るのは、遠巻きにみる分には案外気持ちのよいことなんだが、その人の突貫ぶりに巻き込まれてしまうと、はっきり言って、ツライものがある。少なくとも今の私にはそういうすがすがしいまでの暴力性はもはや存在しなくなってきている。「場」を読みながら、その「場」をぎりぎりのところで裏切り続けようとする空しい近代人的な身の振り方に慣れきってしまったからだ。

 それはそうと、この本。作者の文章の荒削りさが突貫系の生き方を見事に描写している。粗々しい生き様が荒削りな文体と幸福な結婚をしたのがこの作品。
 しかし、この手法は次では仕えない。一回こっきりのもの。幸福な結婚はきっとこの一度きり、処女作における奇跡のようなものだ。作者が次々と本を書いていくとするならば、この次の一歩がかなり難しいはずだ。ということもこれあり、この鈴木カオリ女史の次回作に期待したい。この作品は彼女の生き様そのものの勢いで書けた。しかし、作家の勝負は、勢いや初期衝動が終わったときから始まる(って誰かが言っていた気がする。誰かは不明です、すんません)、