BearLog PART2

暇な中年の独り言です

 鉄コン筋クリート

 松本大洋が大好きなんである。「青い春―松本大洋短編集 (ビッグコミックス)も「花男 第1集 (ビッグコミックス)も「ZERO―The flower blooms on the ring………alone. (上) (Big spirits comics special)」も「ピンポン (1) (Big spirits comics special)」も、大好きなのだ。勿論「鉄コン筋クリートall in one (ビッグコミックススペシャル)」も好きなのだ。
 松本大洋、何がいいって、あの絵が好きだ。最近ではちょっとオサレマンガとして受容されているとも思うのだが、とにかくあの「絵」が大好きだ。
 私はここしばらく熱心なマンガの読者ではないのだが、絵の下手な漫画家が増えたような気がしている。おいおい構図何とかならんかい。構図くらいならまだいいが、そもそもデッサンずれえてないかい?なんていう人が増えたような気がしている。まあかくいう私自身、別に絵が上手なわけではないし、そもそもデッサン力は欠落しているわけで、あまりブツブツ言うと、天に唾することなのかもしれないが、まあ下手な絵が増えた気がする。
 その中で、松本大洋は頑張っていると思うのだ。ストーリーだ何だって、。そんなの関係なしに画力で全てを語ってしまう。その勢いと迫力が好きだ。
 そして、あのあか抜けない台詞回しが大好きだ。色々な主人公が喋る、あのあか抜けない台詞はいい。敢えて臭い台詞が出てくるときでも、それは何らかの他者の視線によって異化されており、イヤミにはならない。そこがいい。ペコの言う「かっちぶー」なんてその典型だ。異化をはらんだあか抜けない台詞がいい。
 そして映画版「鉄コン」である。一言で言ってしまえば、「マンガ」を忠実に再現したもの、ということになる。それ以上でも以下でもない。映画化することによって、原作に対する批評的なスタンスを示すこともできるかと思うのだが(批評的なスタンスがかえって原作に対する愛を深く示すケースもあるだろう)、マンガをいかに忠実に映画にするかに血道を上げており、そういう意味では、マンガのファンでも安心してみることができる。それ以上でも以下でもない。原作を読まずして映画を見た方、映画における不満についてはマンガを読んでも解消されないだろう。こういうあり方もあり、だとは思うが、せっかく映画にするのだったら、原作に対する批評性で、原作への愛を示して欲しかった。
 見て損ないけど、得もない。