珍しく妻からものを貰った。勿論誕生日でもないし、何か記念日系かというとそうでもない。ひょっとして自分が認識していないだけで、本当は何かの記念日なのかもしれないけど、、、と思って、随分と考えたけど、多分そうではない。
ダイニングテーブルの上、いつも私が座っている席のところに何やら小さな瓶が置いてある。よく見ると「HOMME」と書いてあるから、男性用化粧品のようだった。
これこれ。
「boyの小林さんがいいって言うから、ちょっと買ってみた」
「ふうん。おれ、いっつもニベアだからなあ(笑)」
ちょっと解説しておこう。boyというのは、我々夫婦がお世話になっている美容室のこと。代官山、原宿、バンコク等々に店舗を構える有名美容室だ。小林さんというのは、boyで我々夫婦を担当してくれている方である。この小林さんの話をすると色々とあるのだが、それは今日の問題ではないので、止めておこう。
「いっつもニベアの男性用を塗っているでしょ。小林さんが言うにはすごくよいから、おすすめです、って言っていたから」
いつも使っているのはこれ。
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「ありがとう。さっそく使ってみるね」
2つの意味で驚いた。
一つ目は、前にも言ったが、何の記念日でもないのに私のことを考えて、ちょっとしたものを買ってくれたということ。誕生日はそれなりに気の利いたプレゼントを贈ってくれていたのだが、それ以外で何かものを貰ったというのは随分と久しぶりのような気がしたから。不意打ちとでも言おうか。
二つ目は、私が風呂上がりにニベアの男性用を使っていること等を知っていたということだ。
はっきり言おう。もう結婚してだいぶ長い時間が経過しているので、妻は私に対しての関心度などほぼゼロだろうと思っていたのだ。しかし、風呂上がりにニベア男性用を塗ったくっていることに気付き、馴染みの美容師の方からのおすすめがあったとは言え、旦那のために何かを「買う」というアクションをとってくれるものなのだ、ということ。
この二つの事柄から出てくる結論は簡単。少なくとも、「妻はまだ私のことを気にかけてくれている」ということだ。
言葉はヴィトゲンシュタインではないが、ゲーム的な部分がある。解釈の余地、行間が出てしまい、その行間にメタメッセージを読み込みたくなるものだ。「好き」と面と向かって言われたところで、それを字義通り信じるかどうかで言うと、なかなか信じられるものではない。それは言語というものが、相手からのリアクションを前提としたゲームのような側面を持たざるを得ないからだ。コミュニケーションというのは意図的ではないにしろ、ゲーム性を持つ。だから、「オセロ」的な悲劇も成立し得るのだ。嫉妬なんて最も言語的なコンテキストから起こりやすい感情であって、「緑色の目をした怪物」は人の心、すなわち言語的な環境に生息している。
しかし、行動については、その行動を「言語的に解釈しない」前提であれば、行動は行動として存在する故に、それ自体に雑多な解釈が入る余地がない。
Actions Speak Louder Than Words
ってことだ。
言葉で人の気持ちを変えるのが難しいのは、言語の持つゲーム性やメタメッセージ性なんだと思うけれども(要は字義通り言葉を信じないで、その言葉を発した相手を疑ってみる行為を妨げることはできない部分)、行動を行動としてしか解釈できないとすれば、それに対して、行動はストレートに相手にメッセージを伝えることができる。
あ、勿論行動を言語的に「解釈」すれば、それは言語的なゲームとメタメッセージを感じることはできるが、それを許さないような強制力というものも行動にはあるような気がするから、こう言っているのだ。
で、何が言いたいかと言うと。
人の気持ちなんて、結構簡単にころっと変わるということだ。
別に、妻に対する私の気持ちが男性用化粧品云々で変わったということは基本的にはないけれども、敢えて言うとすれば、心の底から「うれしかった」ということだ。まだ気にかけてもらえているってことがうれしかったということだ。そして、妻の関心がまだ自分に向かっていることに気付いたわけで、この「気付き」が今度は私の方から妻へのアクションに影響を与えないわけがない。
きっと人の気持ちなんてちょっとした行動であっさりころっと変えられるのではないかなと思った次第なんである。