BearLog PART2

暇な中年の独り言です

 INLAND EMPIRE

 お恥ずかしい話だが、夫婦揃って途中で何度か落ちた(苦笑)
 とはいうものの、面白くないというわけではない。リンチ独特の映像と音に酔いつつ、多分ストーリーなんかはあってないようなものだと高をくくって、寝たり起きたりを繰り返しつつ、3時間の長尺を見切るこの快感。
 基本的にリンチは変態だと思う。変態中の変態だ。今回もさして美しくない女優をさらに美しくなく撮っている。しかもハンディでアップアップアップで迫るから、女優にしてみれば、大変だったのだろうなあと思う。「気狂いピエロ」のゴダールアンナ・カリーナを執拗に追っかけたように、またタランティーノユマ・サーマンを執拗に追いかけるように、リンチはおばさん俳優をこれでもかってくらいに追いかける。そのカメラは変態の視線のそれ以外、何者でもない。
 映像効果も音も、本当によく練り上げられ、しっかりとまとめられており、ある意味、サウンドトラックについては、下手な音響派のCDを聴くよりもずっと面白い気がした。
 脚本もよく錬られていて(自分が起きていたところだけで言うと(苦笑))、映画中映画と映画の区別は揺らぎ、メタとオブジェクトがぐちゃぐちゃと交歓するところは、もう身震いするほど面白い。赤塚不二夫先生の夜空のウナギ犬カットのように、訳もなく挿入される売春婦まがいのお姉さんたちの妙にほのぼのしたダンスシーン。もう最高。
 ここ最近で観た一番魅惑的なトリップムービー。眠くなるのを恐れず劇場へ脚を運ぶことをオススメしたい。
 睡眠と覚醒という、自らの意識のトリップも楽しめて、本当にお得だから。