BearLog PART2

暇な中年の独り言です

 菊地成孔3days最終日

 ということで、またまたピットインにて、菊地成孔3Daysへ。今回のデュオのお相手は、師匠でもある山下洋輔。いつものピットインと違って、菊地の3Daysは、人気があるせいかチケットぴあでの取扱いになっており、人数も菊地のMCによれば、150人と「絞った」のだそうだ。前回、あまり絞らなかったら、倒れたりした人が出たらしい。真偽のほどは私は知らないが、多分事実なんだろう。
 山下洋輔を直近で生で聴いたのは、オーネット・コールマンのときだから、もう随分前になる。そのときも老境のオーネット・コールマンを喰ってしまうような鮮烈な演奏をしていたのは間違いない。
 山下洋輔については、私はかねてから、その日本人離れした強烈なリズム感に尊敬の念を感じている。あの高速パッセージの陰には強烈なリズム感があり、それは非常に重たく、まったくもって日本人離れしているのだ。今回のライブでは選曲などにより、その強烈なリズム感をじっくりと味わうことができて、さすが弟子たる菊地だなぁとちと舌を巻いた。
 1stセットは、まずはちゃーりー・ミンガスから。ミンガスの「Orange was the color of her dress」。一曲目からミンガスか〜となかなか渋いなぁと思いつつ、二人が奏でるリズムとメロディの微妙なバランスに酔う。山下洋輔の高速パッセージは相変わらずで、その上に時折リリカルに、時折ノイジーに菊地のサックスがからむ。山下洋輔のおかげでリズム隊がいなくても十分に強固なリズムがビルドアップされていくから、本当に心地よい。即興的な曲を挟んで三曲目は、毎回のように菊地がライブで演奏している「You don't Know what love is」。これはたまに歌を入れてやってみたり、ラテンっぽいアレンジにしてやってみたりと様々な形式によってライブで披露されているが、今回はシンプルな形で。あと確か二曲ほど演奏して1stセットは終了。
 2ndセットもミンガスの「Fables Of Faubus」からスタート。こちらも重いリズムが印象的な曲だが、山下の高速パッセージと菊地のはっきりしたサックスが絶妙だった。ミニマルになりそうでいながら、圧倒的なリズム感と分厚くきれいな音で楽曲を立体的にしてしまう山下と、そこにキャッチーなフレーズを叩き込みつつ、時折ノイジーにサックスを響かせる菊地。2ndでも衰えず。そして最後の曲はコルトレーンもやっていた「Say it」。
 アンコールは「おじいさんの時計」。最後にバッハのコラール「主よ、人の望みの喜びよ」の一節がさりげなく挿入される。新宿の喧噪に戻り帰宅を急がねばならない我々都民への子守歌なのか。
 「おじいさんの時計」については、山下洋輔の十八番だと認識していたが、菊地のMCによれば、「子供の頃から自分にとりついてしまったメロディ」なんだととのこと。それから菊地自身も山下の音が「黒人っぽい」のだということを述べていた。3Daysも最終日になると意外と身体にくるんだ、と冗談めかして言っていたが、それは案外本当なんだろう。
 とにかく、非常に楽しめるデュオだったことは間違いない。