BearLog PART2

暇な中年の独り言です

 物語

 東浩紀も言っていたことだが、人間は有り余る過剰な想像力を持っている。その過剰な想像力を処理しない限り、人間は日常生活を送ることが出来ないはずだ。夏目漱石は人の世が住みにくいから芸術が生まれた、ということを「草枕」で言っているわけだが、実は世の中と人間の軋轢が物語や芸術を生むわけではない、と思う。
 人間は生まれながらに生活する以上のレベルの過剰な想像力を持って生まれてきている。その想像力があるが故に、多分、現実を受け入れることができない場合が出てくるだろう。「こんなはずじゃなかった」みたいな思いを抱いてしまう、ということは誰にでもある経験であろうし、だからこそ、その「こんなはずじゃなかった」という思いだけ抱えていても、はっきり言って生きていくことが難しくなってしまう。
 だからこそ、過剰な想像力を消費するために、芸術や物語を消費する。物語を消費することによって、何とか現実と折り合いをつける。だからこそ、物語には中途半端に現実を裏切る適度の蓋然性と適度の偶然性が求められる。偶然を装った蓋然性こそが、人間を現実という過酷な現実から救うのだということは、ふと思いついたのだが、けっこう大事なことのような気がする。