BearLog PART2

暇な中年の独り言です

 あけましておめでとうございます、ブランド考

 あけましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願い致します、とりあえずご挨拶。
 私の周囲にいる方はかなりの頻度でこの駄文を読んで下さっているのも事実なので、このご挨拶は有効かもしれない。


「一年の計は元旦にあり」


 という言葉があるようだが、今年は右ふくらはぎの痛みから、ほぼ一日家でだらだら寝て過ごした。おかげで大昔に購入して本棚の肥やしになりかけていた、「ベルナール・アルノー、語る」を読了。インタビュー集なので、ベッドの中で読み終わってしまった。
 そもそもこの手の本としてはだいぶ昔のものなので、ちと古めかしいところのあるが、高級ブランド・コングロマリットを形成するにあたっては、「マーケティングよりもクリエイター優先」「独立独歩の中小企業の連合体」「分権制」が有効であるということを繰り返し語っているのは、多分彼の信念で、連結経営をする場合では一つの示唆となりうるものである。
 また印象的なのは、「製品を作った人の名前がブランド名に残るわけで、『アルノー』という名前は何の製品も作っていないからブランド名にはならない」という箇所か。ブランドというのは、あくまでも「製品」にリンクするものであって、事業ポートフォリオを構築した人に冠されるものではないということだ。これはとりもなおさず、事業ポートフォリオの構築には、「本質的な価値はない」ということを示していると理解した。
 前職時代、ある種のビジネスモデルを完遂するための「事業ポートフォリオの構築」に血道を上げていた経験を持つものだが、事業ポートフォリオからは「ブランド」は生まれないということだ。だから、ジャック・ウェルチというブランドは生まれないし、アルノーというブランドも生まれない。バフェットというブランドも生まれないわけだ。
(私の記憶の中にある言葉をひもといているだけで、この記述が本書の中に正確にそのままあるわけではないことをお断りしておく)
 アルノーの事業ポートフォリオ構築の手法のプロセスは、


古くから在るブランドを安く買う→新しいクリエイターをブランド再生に投入し、その意向を尊重する→マーケティングに頼らない消費者とのエモーショナルタイの形成→ブランドバリューのスパイラル的な向上


 というかんじか(私なりにまとめてみると)
 このサイクルのミソは「古くからあるブランドを『安く』買う」ことと「クリエイターの投入」かな。古くからあるブランドに対して、ジョン・ガリアーノやマーク・ジェイコブズの投入は、ブランドの価値を上げる方向に大きく寄与したわけだ。古い言葉だが、伝統と革新、ということか。エルメスのデザイナーにゴルチエが就任したことなどがすぐに連想される。
 だいぶ前に読んだ本なのだが、岩波新書に「ブランド」という本がある。その中の記述を記憶の中からひもとけば、「ブランドというのは固定したものではなく、想像と破壊という二つをブランド形成のプロセスにインクルードしているものだ」というようなことが書いてあったと思うのだが、それと見事に符合する。ブランド自体も絶えざる「変化」のプロセスにいなければ、消費者から見捨てられるわけで、アルノーは意識的にそのプロセスを行っているわけで、そこは賢いと思う。
 ただ「これからは精神的なものが求められる時代になり、精神的に高度な満足を消費者に与えるブランド品はますます売れるンじゃい」(例によってこの表現がそのまま書物に記載されているわけではない)的な態度はどうかとは思う(苦笑) しょせん、ブランドとはいえ、資本主義をドライブするための「仕掛け」の一つに過ぎず、それは技術革新以上に本質的なものでは、まったくない。
 とはいえ、久しぶりに使っていない大脳を刺激されたことと、自分が今勤務する会社のブランド価値向上のためへのアクションプランを考えるにはよいキッカケではあった。


 ってな元旦を送っています(笑)


 今年も、皆様、よろしくお願い致します。

ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る

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ブランド―価値の創造 (岩波新書)

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