BearLog PART2

暇な中年の独り言です

 She was born on 25th June 2008

 私たち夫婦が、彼女の存在に気付いたのは、確か昨年の冬だったのではなかろうか。行きつけの居酒屋VINから夫婦揃って帰ってくるとき、妻の具合が急に悪くなり、電車の床に座り込んでしまったことがあった。それ以降、微熱が続き、「風邪かな? もしかして?」などと言い出して、「じゃあ妊娠検査薬でも試すか」と言って、実際に試してみたら、これが陽性。で、地元の久我山病院で検査を受けたら、「オメデタです」ということになったのだ。
 それから、妻はか細い体で、悪阻にも耐え、ここ最近は米袋をお腹に抱えるのとほぼ同じ負担に耐え、今日晴れてここに娘を産んでくれたわけである。
 私は今まで、相当自分勝手、ワガママの限りを尽くして生きてきたということを自負しているのだが(関係者各位には深くお詫び申し上げます)、今ここで実際に娘を授かってみると、「つまらんエゴは棄てないといけない!」と、まったくもって柄にもないことを真剣に思っていたりする。
 本当に子供を授かるということは不思議なことであるなあと。いやはや、色々なことに感謝しなければならないと真剣に思うわけだ。
 さてさて。
 今日は会社を休んで、洗濯をすませてから、病院へ向かう。10時には着こうと思っていたのだが、いやはやお恥ずかしい限り、色々と手間取り、結局病院に着いたのは10時半。病室へ行くと、もう既に妻はLDRに移動しており、荷物の整理をしてから、私もそそくさとLDRに移動した。
 LDRでは、早くも妻は点滴を受けていた。点滴は陣痛促進剤なんだと思う。あと背中に麻酔用のチューブを入れられていた。表情は案外明るく、ただ時折、陣痛がくるようで、そのときは苦痛に顔を歪ませるが、それでも普通に私と会話することができた。
 麻酔をきつくすると、出産のプロセスが遅くなってしまうということもあってか、妻は予想以上に痛みに対する耐性を見せてくれ、普通の人よりも麻酔を使う時間を遅らせ、かつ回数も減らすことができたので、案外スピーディなお産が可能となったようだ。
 12時半くらいに母親到着。弁当を買ってきてくれたので、病室で弁当を二人して食べる。そのときに助産師さんがやってきて、「かなりキテいるので、ここでお産に入っちゃいます。ここでもう一度麻酔を使うとあと2時間後くらいから始めるかんじになります。本人も大丈夫だと言っているので、今から準備を始めて、1時半くらいに出産という形でいきます」と言ったので(記憶に頼っているので、かなりあやふやですが、そんなことを言っていたと思う)、母と二人、そそくさと弁当を食べ終え、再びLDRへ向かう。
 LDRに入ると、苦痛に歪んだ妻の顔を見たら、大丈夫か?と思い、ちょっと心配したが、無痛分娩を選択してこれなんだから、通常だとどれだけ大変なんだろう?と思い、女性の偉大さを痛感。だって、妻の顔を見ているだけでこっちが痛くなってきてしまいそうだったから。
「ご主人とお母様、立ち会われますか?」
 と聞かれ、ここから出て行くのも何だなと思い、当初予定とは異なり、急遽立ち会うことにした。でも今から考えてみると、立ち会えてよかったなあと思うのだ。
「痛みがきたら、息を吐いて、それから大きく吸って、それから股の間の私の顔を見るようにイキんで下さい」
 助産師さんの声に合わせて、ふうっとイキむ妻。
「なが〜くイキんで下さい!」「ご主人、お母様、赤ちゃんが出てきやすいように奥さんの上半身をおこしてあげて下さい!」
 やさしいがハリのある口調で指示が出る。そうこうするうち、「ひょっとして臍帯がからまっているかもしれません。出ようとすると引き戻されています」とのこと。一瞬不安がよぎるが、とりあえずは妻に頑張ってもらうしかない。
「ふううっ」
 イキむ妻。
 助産師さんが赤ん坊の頭の回りをなぞると、妻はイタイイタイと言う。見ているだけでこっちが痛くなりそうだ。無痛分娩って言ってもちっとも痛くないわけではないのだという現実を、身をもって知る。
「ここから分娩台に乗りますよ」
 寝ていたベッドが、トランスフォーマーよろしく分娩台に変形。分娩台を見ていたら、不謹慎なんだが、「エヴァンゲリオン」のエントリープラグのシートを思い出してしまった。何だかそっくりなのだ。ま、「エヴァ」のことだから、そのあたりを狙っているのかもしれない。
 助産師さんがお医者さんにヘルプを要請。先生が登場し、小さな吸盤みたいな器具を頭につけ、ゆっくりと引っ張り出す、妻のイキミが最高潮?に達すると、やっとのこと出てきた。
 初めて我が子の鳴き声を聞いたら、こんな不届き者の私でも、涙が出そうになった。何だか分からないけど嬉しかった。
 産まれた子供は、白い脂に体を覆われ、どういうわけか目を開けている。思っていたよりも髪の毛は多いし、目も大きい。手の指が長い。重さ2790gで身長は49cm。無事にこの世に生を受けた。何だか分からないけど感謝、である。
 激闘を終えた妻も案外元気で、いやはや臍帯もからまっていないし、まったくもって母子ともに結構そのもの!である。
 そうこうするうちに、お爺さん(父)と叔父さん(弟)も到着し、みんなで好き勝手な事を言う(笑)

 いやはや、本当に無事に産まれて本当によかった。これから、彼女とは長い付き合いになる。今日の思いを忘れずに、新米パパとして子育てに邁進しよう!