BearLog PART2

暇な中年の独り言です

「三人ソング」

 先般、ヴァイオリン教室の発表会があった。
 昨年は娘のお受験があったので、父娘ともに不本意ながら不参加となってしまったのだが、今年は二人とも参加した。満を持して参加し大成功と言いたいところだが、父はコケにコケた。
 一昨年の生まれて初めての発表会(いわゆる「デビュタント」だったわけだ)では、そもそも伴奏合わせからして、ガチガチに固まったが、本番については悔いが残るとはいえ、まあ自分としはマシだった。今年は、伴奏合わせについては、緊張はしたものの、初めての発表会よりはマシに弾けた。ということで、油断したわけではないが、いざ杉並公会堂小ホールのステージに立ち、ライトを浴びたら、やっぱり激しく緊張している自分に気がついた。
 構えて弦の上に弓を置き、最初のBの音を出したときはまだ良かった。一応、ほんのちょっとだけ、ビブラートもかかったし、
 で、1ポジから3ポジにチェンジした瞬間から、何だか弓が微妙に震えだし、体が言うことを聞かなくなってきた。で、何でもないところを
 コケまくった。
 自分としては、ずいぶん練習したつもりだった。朝も、場合によっては夜も。ジムにも行かず、残業もせず、やったにもかかわらず、このザマかよ、、、とほほ。
 それと対照的なのが娘。多分練習時間にすれば私の十分の一以下だと思う。しかも練習のときには平気で二、三小節抜かすし、テンポも変幻自在。大丈夫かいな、、、と思っていたら、
 思っていたよりも上手に弾いてしまった。
 我が師匠がおっしゃるには、
「子供はそんなもんです」
 とのこと。
 大人はしょうがないか。。。あんなに練習したのに、悲しいものだ。
 自分たちの出番が終わって、他の方々の演奏を客席で聴いた。みんな上手だ。ブルッフシベリウス、サン・サーンス等々。いやはや立派。娘は上手な方々が舞台に出てくると、
「ねえねえ、お父さんはこの曲弾ける?」
 と必ず聴いてくる。「弾けるわけないよ」と言っているうちに、娘に罪はないのだが、ちょっとイラっとしてしまった(苦笑)
 さてさて、発表会はそんなこんなで終わってしまったのだが、その翌日に、サントリーホールのイベントに行ってきた。このイベントはとても楽しく、娘も喜んでいた。しかし、マイケルさん、ケースから自らのヴァイオリンを取り出して、とあるフレーズを弾いたとき、
 その音色のあまりの素晴らしさに、鳥肌がたった。
 自分も、いつになったら、ああいう音が出せるのか? いやはや一生無理かもしれない。
 それはともかく、その晩。娘が親子三人で演奏をする、と急に言い出した。娘が言うには、
「『三人ソング』というのを私が作曲する。私はヴァイオリンを弾くから、お父さんはギター、お母さんは太鼓とトライアングルを弾いて」
 そこで、私は納戸からえっちらおっちら、スクワイア製のテレキャスターグレコのアンプを出してきて、セットをする。ギターのチューニングなんて何年ぶりだろう。妻は、ちょうど発表会の合奏の部で娘が使ったトライアングル(師匠から借りたもの)を弾くことになり、娘は自分のヴァイオリンを準備する。
 別に大した曲を弾いたわけではない。単にイ長調のスケールを娘が弾き、それに私がコードをつけ(ギターのコード、かなり忘れていて、困った。はっきり言ってもう弾けない)、妻が娘と同じリズムでトライアングルを叩く。それだけのことだった。でも、娘はご満悦だった。自分では完全に「作曲」した気になっていた。
 でも、この合奏、父親的には本当に楽しかった。こういうの、いいなあとしみじみ思う。家族である実感を切々と感じるのであった。
 この経験で、彼女が音楽にさらに夢中になってくれればいいのだが、翌日の様子を見る限り、あまりそんな幸福な状況にはなっていないようだった(泣)