BearLog PART2

暇な中年の独り言です

 矢野顕子@Blue Note Tokyo

 正直に告白すると、私は今まで、矢野顕子女史の歌をきちんとまじめに聞いたことはあまりない。という不真面目くんなので、生で彼女の声を聴くのは勿論初めて、だったのだが、非常に楽しゅうございました。人の「声」というのは、やはり、「人」にとってはもっとも威力のある「楽器」なんだなあということを再認識してしまった。Blue Noteはどうやら、新装開店したらしいのだが、あんまり変化に気付かなかった(笑) ただ、昔懐かしい整理券システムではなくなって、予約したシートの位置によって、入場できるタイミングが微妙にずれる。快適なのかどうなのか分からないが、気分で発言させていただくと、微妙にチャージを上げている?ような気がしたが、まあいいや。
 さて肝心のあっこちゃんの歌のほうだが。声は本当にのびのびで、CDで聴くのと寸分違わない。ただ、ピアノの音色がいまひとつ、ぐっとくるような輝きをもった粒揃いのようなものではなかった。ミックスのせいなのか、本人の問題なのか、私の貧相な耳では分からなかったのだが、もうちょっときらきらした音だったら、彼女の声とぴったりはまったのではないかなあ、と思った。
 カバーした曲が面白い。Doorsの「People are strange」やはっぴぃえんどの「相合傘」。そして、アンコールでは、なななな、何と! Led Zepplinの「Whole lotta love」まで。オリジナル、と言ってしまっても過言ではない、強烈な個性。「Whole〜」なんて、あのキメのリフを最後の最後まで出さないアレンジといい、なかなか素晴らしい。
 とはいえ、特筆すべきは、バックの二人だろう。六弦ベースを弾くアンソニー・ジャクソンに、ドラムのクリフ・アーモンド。この二人のパフォーマンスにはなかなか痺れた。二人とも派手派手でプレイするわけでもなく、かといって、自己主張がないわけではなく、いい塩梅で淡々と素晴らしいグルーヴを叩き出す。この二人の強靭とも言えるグルーヴがなければ、あっこちゃんの声もピアノも放縦に流れすぎて、楽曲としての体裁が崩壊してしまうのではないか、なんて僭越にも思ったりした。楽曲を楽曲という構造たらしめているのは、明らかにリズムなのだと思う。また、そう思わせるだけの音の力がバックの二人には明確に存在していたことはどんなに評価してもしすぎることはないと思う。特にアンコールの「Whole〜」などは、二人の叩き出すグルーヴがなければ、得体の知れない残骸になっていた可能性もあるとさえ、思う。
 矢野顕子の声、そして強力なグルーヴを叩き出すリズム隊、考えてみればこれ以上の組み合わせはないだろう。素直に楽しめるすごくよいライブだったと思う。この組み合わせだったら、是非また聴きに行きたい、と思ったのである。