BearLog PART2

暇な中年の独り言です

かなり高い確率で起こるであろうことに遭遇した朝

 朝、いつものように家を出て、駅に向かって地元の商店街を歩いていた。

 いつもの通り、かなりぼおっとして。地元を歩いているときの私は本当にぼおっとしていて、酷いときには家族にあっても気が付かない時があるほどなのだ。いやはや、我ながら、そのダメ人間ぶりには呆れてしまう。

 そんな私ではあるが、杖をもった品のいいお爺さんが道端に倒れ、そのお爺さんを助け起こそうとしているお婆さんがいることには、さすがに気が付いた。通勤通学に忙しい人達はそんな二人を見て見ぬ振りと言っていい。

 父が施設に入っている私としては、そんな光景を見過ごすわけにはいかなかった。

「どうしたんですか?」

 と、私は声をかけた。

「ちょっと休ませたいんで」

 とお婆さんは言い、道端の店舗のちょっとした段差を指差し、

「ここまで運んで休ませたいんです」

 と、悲しそうな顔をして言った。

「お手伝いしましょうか」

 と、私は言い、お爺さんの肩に手をかけたところ、近くの工事現場から屈強な人が二、三人わらわらと現れて、お手伝いします、と言ってくれた。

 彼らがあっという間にお爺さんを段差に座らせてくれ、さっと立ち去っていった。気持ちいいばかりの仕事、である。いや、声をかけたは良いけれど、私は何もすることがなかった。よっぽどひ弱にみえたんだろう。それはともかく、手際よいお手伝いには関心することしきりだった。

「病院へ行くんですか?」

 と、私は尋ねた。

「はい」

「K病院(地元の比較的大きな病院)ですか?」

「いえ。目黒の病院なんです。家を出てやっとここまで来たんですよ」

「そうですか」

 タクシーを拾ってあげようかとも思ったのだけれど、ありがた迷惑になっても困ると思って、できることもないのでしばらく様子を見ていた。

 転んだであろう、お爺さんも何となく落ち着きを取り戻してきた感じがあったので、では私は行きますね、と一言だけ言ってその場を去った。私に手伝えることは何もなさそうだった。

 今の今まで、あの老夫婦がどうなったのか気になっている。無事に病院に辿り着いたのだろうか?

 これ、他人事ではないのだ。いずれ私も……。