- 作者: マイクル・クライトン,酒井昭伸
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/09/07
- メディア: 単行本
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- 出版社/メーカー: 早川書房
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書店で平積みになっているのを見て、気になっていたので、amazonで購入。
当然フィクションなのだが、例によって現実に起こっていることをベースにして、いかにも「あり得そう」だけど実際には「まだない」現実を、95にも及ぶ短い章をつなぎ合わせて描き出している、ということになるだろうか。
実は、クライトンの熱心な読者ではない、というか、この手のエンターテインメント小説については、あまり好印象を持っていないのだが、しかし、現実の技術が人間の想像力の限界まで来ているような事態があからさまになるようなことが多々あるので、こういう方法論もやり方としては、アリなのかなあなどと思ったりした。
つまり、現実を描くために、「物語」的な、もしくは言葉を換えるなら「分かりやすいアイコンを散りばめたエンターテインメントとしての『フォーマット』」を使う、というのは、ノンフィクションをもって主張を表現するよりも、的確なのではないかとということ。
人は事態を認識するとき、やはり物語だの分かりやすいアイコンのようなものを呈示してもらえると、その作業が非常に簡便になることが多い。クライトンの話も、その手のものとして認識した方がよいのだろう。
ノンフィクションの延長線上にある、あり得なさそうだけど、今の技術の進展、現実の奇異性を考えると、「あり得てしまうような」もの。
現実の一端、もしくは著者の主張の代弁として作品をとらえていくとすると、色々なところでのデフォルメがすごく気になってくるのだが(ベンチャーキャピタリストの描き方やバイオテクノロジー企業のCEOの描き方、等々)、作者の罠に確信犯として、嵌ってしまえば、これ以上に面白いことはない。
まあ、ハリウッド映画と同じことなのかな。
たまにはいいのだと思う。厳に私自身、上下の二分冊をほぼ一週間で読破してしまっている。少なくとも、それだけ読ませる力があるということだけは明かで、それは素材の面白さや書物としての構成等々、職業作家としてクライトンが優れているということの証明なのだとは思う。
感想になってないけど、それは誤解を恐れずに言うと、ハリウッド映画や新聞記事を批評することができないのと同じようなものなのだと思うのだ。
それはそれ、これはこれ、ということなのかな(笑)