昔からジョニ・ミッチェルが大好きである。特にジャコ・パストリアスやらパット・メセニーやら、手練のミュージシャンと組んで、先鋭的なアルバムを作っている頃が一番好きである。
特に下記の2枚は非常に好きなんである。
特に「SHADOWS & LIGHT」の1曲目、「In France, they kiss on main street」という曲が好きなんである。ということで、いつもの通り、Alexaくんからアップルミュージック経由で引っ張り出し、娘に聞かせてみた。
Joni Mitchael IN FRANCE THEY KISS ON MAIN STREET
勿論、これにはスタジオ録音のバージョンもあるのだが、このライブ版のドライブ感が結構好きなんである。
これを聞いた娘の反応がまた面白かった。
「なんかカフェでかかる音楽みたいだね」
ある意味、カフェでかけやすいような音楽であることは間違いないだろう。耳あたりのよい音、メロディー、そしてジョニ独特の声。しかし、この曲自体に対しての評価がないのが気になった。
それは父が好きだと公言している曲に対して、露骨に評価をしないという我が娘なりの思いやりなのかもしれないけれど。
「好きだ、嫌いだ」を表明しないということは、別の観点からすれば、彼女にとっては音楽というものは好んで聞くものではなく、それこそ水道水のようにAlexaや父親のiPhoneから湯水のように流れ出てくるものになっているのかもしれないなあと思った。
自分は若い頃、自ら音楽を求めたものだった。当時渋谷にできたばかりのタワーレコードに行き輸入盤を漁り、ライブに行き、クラブに行き、好きな音楽を自分の意志で求めたものだ。
しかし我が娘を見ていると、そんな気配はない。スマートスピーカーやスマホから勝手に流れてくるもので、彼女のキャパからすると溢れんばかりの音楽があり、その中から適当に聞いているだけで、「この音楽が好きなんだ」という感じはほぼほぼない(勿論、こういうのは個人差があるものなのだとは思うが)。
「いいかい、このアルバムには当時のすごいミュージシャンが大勢参加しているんだよ。しかもこれはライブ盤でさぁ」などと、「SHADOWS & LIGHT」のウンチクを語り、ちょっとした説教をしたくなってしまったが、それこそ娘にとってはいい迷惑だろう。
そう思って口をつぐみつつ、ジャコのベース、パットのギター、そしてジョニの歌声に耳をそばだてつつ、自分が歳をとってしまったことに改めて感じ入るのだった。