BearLog PART2

暇な中年の独り言です

 原子心母

原子心母

 久しぶりに聴いた。
 そもそも「ロック」という音楽は、多種多様な音楽を取り込みながら、肥大化していったもので、「ロックそのもの」って何?ということに対しては回答不能なもの、である。不定型なもので、大衆音楽として肥大化していくことを宿命付けられた音楽とでも言おうか。ブルーズを収奪し、クラッシックが育んできたオーケストレーションをパクり、人々が安逸に楽しめるフォーマットを提供し続けてきた。
 人々はロックミュージシャンが提供するフォーマットの新奇性によって、自らの新しい「音楽」への欲望を喚起される、という構造。新しいフォーマットへの欲望と、古いフォーマットへの撞着、その二つの相反する力の中で拮抗しているのが「ロック」なる大衆音楽なのだ、と思う。
 そう考えていくと、この「Atom Heart Mother」は非常にオーソドックスな、もっとも「ロック的」なアルバムなのだ、と思う。
 ピンク・フロイドじたいは、このアルバムや「The Dark Side of the Moon」で到達したナンチャッテ・ブルーズを分厚い装飾で聞かせる、という方法論から逃れるのに四苦八苦してしまうわけで、その事実も、先の述べた「二つの力」で拮抗している「ロック」ということを示していると思われる。

 楽曲としては素直で、けっこう好きなんです、これ(笑)