BearLog PART2

暇な中年の独り言です

 新宿クラブハイツ

 朝起きると雨が降っていた、しかも大量に、おまけに風まで吹いている。午後には雨は止むという話だったのだが、朝の段階で見ると、あまり止みそうにはなかった。
 雨が降ると活動意欲が落ちる。だらだらしたくなるのだが、午後出かけようかと思ったところで、雨が止んでいるのに気付いた。
 こうなれば、何となく外出しようという気になる。
 まずは新宿に出て、恒例のバーニーズNYのセールに繰り出したが、最終日だったということもこれあり、めぼしいものは何一つ残っていなかった。一つだけ、安かったので、サンローランの繰いシャツの購入を考えたが、使用頻度が低そうなのであっさりと諦める。黒のスタンドカラーのシャツじゃあね……妻からはそれ着たらホスト臭くなるよ、と言われるし。実際にホスト臭くなりそうだと自分でも思うので仕方ない。
 しかし、どうして、ホスト臭くなるんだろう? 要するにプリマチュアで成熟度が低いから、ちんぴらみたいに見える、ってことなんだろうなあ。いかんなあ。今年で42なのに。そろそろ枯れても良い頃だが。
 それから遅めの昼ご飯。ここは菊地成孔氏推薦の「クレッソニエール」というお店に初めて行ってみる。伊勢丹はす向かいのセゾンビルB1にあるビストロ。夜、ライブがあるから、夕食が中途半端になるだろうということで、それまで持つようにがっつり食べようと思い、2500円のコースをチョイスし、サバのタルタル、人参のポタージュ(これはデフォルトでつく)とカモのコンフィを選び、デザートはミルクプリン(これもデフォルトでつく)。どれもボリュームがあって、味もしっかりで、サービスも必要なだけ淡々としており、非常によかった。新宿を回遊すると、けっこう昼食をどこでとるか悩む(今までは中村屋のカレーとか、そんなところ)のだが、この「クレッソニエール」はランチメニューが16時まで食べれるので、まさに新宿回遊中の緊急避難お食事場所としては最高に近い気がした。
 それから、コメ兵だのを冷やかす。コメ兵では、ジョン・ガリアーノのミリタリーテイストのブルゾンに心惹かれたが、結局これも買わず。そう言えば、ディオールの哺乳壜が5000円で売っていた。ロゴが入っているだけで、桁が変わるのだから、ディオールさまさま、である。誰が買うのだろう? まあ洒落でプレゼントするにはいいのかもしれない。

 そんでもって、本日のメインイベント。菊地成孔クインテット・ライブ・ダブのライブが、歌舞伎町のクラブハイツなる古式ゆかしい(下がり調子の)クラブ、で行われたのだった。例によって、菊地オタクの妻の友人の方が、我々よりも整理番号が早かったので、我々二人の席を確保して下さった。恐ろしいことに、前から二列目、ほぼかぶりつき。この場を借りて厚く御礼申し上げます。ありがとうございました!
 クラブハイツはいつもはオネエサンのいるところらしいが、当然今晩はそういう色っぽいエスコートはなし。おっと、ただ、ちょっと離れた席に野宮真貴嬢がいらっしゃった。最初、誰だか分からず、妻が、「あの人、野宮真貴じゃない?」と言ったら、無意識に「知るか、そんなこと」と言ったようで、妻がえらく気にしていた汗 まあ口が悪いのは生まれたときからなんで、仕方ないので、諦めて下さい大汗
 とはいえ、野宮真貴は普段でもきれいなのは事実だった。
 で、肝心のライブの方であるが、非常に楽しかった。何せ前から二列目なので、菊地氏のサックスのかちゃかちゃいうノイズまで耳に入ってきて、音楽という肉体的な行為の皮膚感覚が共有できて、そこは何か新鮮だった。PAに通され出てきた音は、ダブ加工され、歪んだり、反響したりと、普通の楽器だけでは出ない音に変容されており、その音の残響がとても心地よい。ダブというのはレゲエでよくある手法だが、ジャズでダブをやるというのは、なかなか他の人はやらない試みだと思うのだが、音響としても単純に楽しかった。曲自体も、「リズム」というジャズのセントラルドグマを打ち砕くように、各楽器がそれぞれ固有のピッチで固有のリズムを刻みつつ、絶妙なところで「曲」としてのバランスを保っている様は、なかなか感動的であった。
 本当に面白い。
 ただ。
 ただ、アンコールで菊地氏が歌った松田聖子の「Sweet memory」については「?」なかんじもあった。あの曲はやはり、松田聖子のためにあるのだという印象を持ってしまった、悪しからず。
 何はともあれ、既存のフレームワークを微妙にずらしながら、独特の世界を形成している菊地成孔の世界を、クラブハイツという滅多にない箱で体験できたことは、なかなか特筆すべきことだと思うのだ。